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時の人 スポーツJ「時の人」は
アメリカで活躍する方々をご紹介するコーナーです。
文化的、社会的に貢献されている人々に
さまざまな角度から焦点をあてご紹介いたします。
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2007年2月2日号掲載
FX Global Inc. President & CEO
松岡光彦氏
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「時の人」今回はFX Global Inc. 社長兼最高経営責任者の松岡光彦氏にお話を伺った。お話の中で松岡氏の好きな言葉から氏の人となり、そして同社の社会的な意義も浮かび上がってきた。

PROFILE Mitsuyoshi Matsuoka
1971年3月 慶応義塾大学理工学部管理工学科卒業
1971年4月 富士ゼロックス株式会社入社
1979-1981年 米国ゼロックス・コーポレーション駐在
1995-1997年 商品事業本部第三商品計画室長
2000-2002年 本社関連事業推進部長
2002年10月〜
FX Global Inc. President & CEO
2004年  北加日本商工会議所新年会コミッティー委員長
2006年
北加日本商工会議所第二副会頭
 
縁(えにし)

 松岡氏の好きな言葉は「縁(えにし)」。元経済同友会代表幹事、富士ゼロックス元会長、現相談役最高顧問の小林陽太郎氏から贈られた言葉だ。松岡氏の率いるFX Global Inc.は富士ゼロックスの米国における投資会社で関連には研究開発・事務機器OEM販売等の子会社がある。
  「縁」。この言葉は松岡氏にとって様々な意味あいを持つ言葉だ。まず、小林氏との出会いという意味。富士ゼロックスに入社したのは「初任給がよかったから」と松岡氏は笑うが、「(小林氏との)出会いがなければ40年もこの会社で頑張ってこられなかっただろう」と付け加える。小林氏の発想の先進性と強力なカリスマ性は夙に知られるところだが、松岡氏もそれに魅せられた一人だという。「とにかく、彼がいるのといないのとでは会議の雰囲気、緊張感が全然違っていました。思わぬところから質問が飛んできますから。こちらが案件の投資リターンについて一所懸命説明していると、彼は一言『で、それはお客さまにとってどんなベネフィットがあるの』とくる。それで、次回にはお客さまの話題を強調すると今度は『ふーん。それで会社にとって、社会にとって、どんな意味があるの』と言われる。」と松岡氏は振り返る。
  「今にして思えば、(小林氏の)言っていたことはとても基本的なことだったと思いますね。ただ、それを言い出すのが早かった。今でこそ、ステーク・ホルダーとか、CS(顧客の満足)やCSR(企業の社会的責任)ということは皆さん口にしますが、私共はずっと以前からそのことを教え込まれていたのだと思います。」富士ゼロックスが70年代に出した名コピー「モーレツからビューティフルへ」というのは当時の電通との間で小林氏が考えたものだそうだが、企業や企業人がどうあるべきかを捉えた先進的な言葉だった。「美しい」企業あるいは企業人とは何か。それは恐らく松岡氏の好きな言葉「縁」を知る企業、企業人のことだ。
  「『縁』とは私流に言い換えればコミュニケーションということでしょうか」と松岡氏は言う。コミュニケーション、交流、それは人と人の関係という意味ではまず社内的にはチームワークということにつながってくる。次に社会のなかの企業という点からすると、コミュニケーションはCSRや企業の社会貢献という意味になる。その点でも富士ゼロックスは先進的で社員のボランティア活動なども積極的に奨励してきた。松岡氏自身も北加日本商工会議所で第二副会頭として活躍している。さらに地球の中の企業という点からすると「縁」は地球環境問題にまでつながってくる。ローマクラブが「成長の限界」ということを打ち出し、国連地球サミットで「持続可能な開発」が「アジェンダ21」に盛り込まれて既に久しいが、ゼロックスグループは国際的規模で環境問題に取り組んでいることで知られている。地球環境問題というと大きな問題であるが、小林陽太郎氏はある講演のなかでこの問題は「個人的な問題でもある」と述べている。いや、「縁」のこの側面ばかりでなく、すべての側面が個人の在り方に収斂してくる。富士ゼロックスはその「ミッションステートメント」の中で「個人の尊重」を謳っている。

静かなることを学べ

 以上のことを考えると、「縁」という発想は松岡氏が好きなもう一つの言葉につながってくる。それは、“静かなることを学べ( Study to be quiet.)”釣りを愛する人たちにとってバイブルと言われる「釣魚大全」の中で著者のアイザック・ウォルトンが述べた言葉として知られている。松岡氏はフライフィッシングを能くするという。川のせせらぎ、鳥の声に耳を傾けながら静かに釣り糸を手繰るところにその愉みがあると氏は語る。ところが、ウォルトンが生きた17世紀のイギリスは革命と動乱の嵐が吹き荒れ、決して「静かな」時代ではなかった。ウォルトン自身も裕福ではあったものの妻子をすべて自分より先に亡くし、幸福とは言えない人生であった。だからこの言葉には釣り好きが世間の喧噪を逃れて自然と親しむというような隠遁的な意味以上のことが言われている。実はこの言葉はウォルトンのオリジナルではない。文字どおりの聖書の「テサロニケ人への手紙」の中の言葉だ。そこで使徒パウロは信徒たちに励ましの言葉を贈っているのだ。つまり、この言葉はウォルトンの自分を見失わず、人生と向かい合ってゆこうという意志、個の尊重の表現でもあるのだ。
  社会や自然という大きなものの中に在るものとしての個人の尊重や縁。その理念がFX Global Inc.、富士ゼロックスの企業としての在り方を創りあげている。周知のように富士ゼロックスは“ドキュメント・カンパニー”を標榜している。「ただ、ドキュメントそれ自体は結果です。それ以前に個人個人による知の創造があります。私共のサービスのフィールドはその創造のプロセスにあるのです。個人による知の創造をサポートするのが私共の仕事です。そしてそれはネットワークつまりコミュニケーションの構築の中で果たされるのです。ドキュメントそのものは単なる紙切れやファイルに過ぎません。それがネットワークを形成することで新たな知が創造されてくるのです。私共はお客様の現場で学んだ、効率的なネットワーク形成のノウハウを持っています。それが私共の強みなのです」と松岡氏は語る。
  個人個人の知の創造をサポートしネットワーク化し大きな叡智の創造につなげてゆく。それは地球環境問題ばかりでなく現今の困難な社会情勢を見るとき極めて重要なことである。「モーレツからビューティフルへ」という富士ゼロックスが40年も前に掲げたビジョンに漸く世界が追い付いてきた。しかもそのビジョンは愈々切迫したものとなっている。
  ところでこのコピーは松岡氏自身も属している団塊の世代の生きざまも表現している。この世代が青春を迎えた高度経済成長時、豊かさを求めてモーレツに働くことがよしとされた。「猛烈」というより片仮名の「モーレツ」だ。多分、現在40代後半以上の方の記憶に鮮烈に焼きついているであろう小川ローザが出演した某石油会社のテレビCMのあの「モーレツ」だ。つまりそれは消費が美徳となった時代の生き方だ。しかし、団塊の世代は消費文化の先例を受けながらも、一方ではそれに対する批判的な目を養って自分の価値観やライフスタイルを社会に対して積極的に主張した世代でもある。松岡氏のお話を伺っていると、氏がこの世代のよき部分を体現されているということを強く感じる。つまりバランス感覚がよく、先の言い方を繰り返すなら「縁」を知る「ビューティフル」な生き方をされているということを感じさせられるのだ。ちなみに東京ご出身の松岡氏は「みゆき族」だったそうだ。学校が終わればVANのジャケットに身をつつみ、銀座に繰り出した。自身を「ビートルズ世代ですよ」と言うが、現在は専らジャズを聴く。そして釣り以外の趣味はレコード(CDではない)収集。「3000枚は集めたかな」と言う。昨今団塊の世代のリタイアが話題となっているが、「リタイアしたらまたそっちの方にのめりこんで行くかもしれません。でもほどほどにしておかないとね」と笑う。松岡氏はこれから更に輝くのだ。

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