松岡氏の好きな言葉は「縁(えにし)」。元経済同友会代表幹事、富士ゼロックス元会長、現相談役最高顧問の小林陽太郎氏から贈られた言葉だ。松岡氏の率いるFX Global Inc.は富士ゼロックスの米国における投資会社で関連には研究開発・事務機器OEM販売等の子会社がある。
「縁」。この言葉は松岡氏にとって様々な意味あいを持つ言葉だ。まず、小林氏との出会いという意味。富士ゼロックスに入社したのは「初任給がよかったから」と松岡氏は笑うが、「(小林氏との)出会いがなければ40年もこの会社で頑張ってこられなかっただろう」と付け加える。小林氏の発想の先進性と強力なカリスマ性は夙に知られるところだが、松岡氏もそれに魅せられた一人だという。「とにかく、彼がいるのといないのとでは会議の雰囲気、緊張感が全然違っていました。思わぬところから質問が飛んできますから。こちらが案件の投資リターンについて一所懸命説明していると、彼は一言『で、それはお客さまにとってどんなベネフィットがあるの』とくる。それで、次回にはお客さまの話題を強調すると今度は『ふーん。それで会社にとって、社会にとって、どんな意味があるの』と言われる。」と松岡氏は振り返る。
「今にして思えば、(小林氏の)言っていたことはとても基本的なことだったと思いますね。ただ、それを言い出すのが早かった。今でこそ、ステーク・ホルダーとか、CS(顧客の満足)やCSR(企業の社会的責任)ということは皆さん口にしますが、私共はずっと以前からそのことを教え込まれていたのだと思います。」富士ゼロックスが70年代に出した名コピー「モーレツからビューティフルへ」というのは当時の電通との間で小林氏が考えたものだそうだが、企業や企業人がどうあるべきかを捉えた先進的な言葉だった。「美しい」企業あるいは企業人とは何か。それは恐らく松岡氏の好きな言葉「縁」を知る企業、企業人のことだ。
「『縁』とは私流に言い換えればコミュニケーションということでしょうか」と松岡氏は言う。コミュニケーション、交流、それは人と人の関係という意味ではまず社内的にはチームワークということにつながってくる。次に社会のなかの企業という点からすると、コミュニケーションはCSRや企業の社会貢献という意味になる。その点でも富士ゼロックスは先進的で社員のボランティア活動なども積極的に奨励してきた。松岡氏自身も北加日本商工会議所で第二副会頭として活躍している。さらに地球の中の企業という点からすると「縁」は地球環境問題にまでつながってくる。ローマクラブが「成長の限界」ということを打ち出し、国連地球サミットで「持続可能な開発」が「アジェンダ21」に盛り込まれて既に久しいが、ゼロックスグループは国際的規模で環境問題に取り組んでいることで知られている。地球環境問題というと大きな問題であるが、小林陽太郎氏はある講演のなかでこの問題は「個人的な問題でもある」と述べている。いや、「縁」のこの側面ばかりでなく、すべての側面が個人の在り方に収斂してくる。富士ゼロックスはその「ミッションステートメント」の中で「個人の尊重」を謳っている。 |