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時の人 スポーツJ「時の人」は
アメリカで活躍する方々をご紹介するコーナーです。
文化的、社会的に貢献されている人々に
さまざまな角度から焦点をあてご紹介いたします。
バックナンバー
2007年3月16日号掲載
Kagome Inc. President & CEO
石榑 康利氏
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「時の人」今回はKagome Inc. 社長兼最高経営責任者の石榑康利氏氏にお話を伺った。お話の中で石榑氏の好きな言葉から氏の人となり、そして同社の社会的な意義も浮かび上がってきた。

PROFILE Yasutoshi Ishigure
1973年3月 慶応義塾大学理工学部管理工学科卒業
1973年4月 カゴメ株式会社入社
1996年9月 同社名古屋支社長
1999年4月 同社 BU ディレクター
2000年6月 同社取締役就任 (現在)
2004年4月〜
Kagome Inc. President & CEO
2006年
北加日本商工会議所第二副会頭
 
ブランド価値

 数々のIT関連企業のスタートアップを手がけ、バーチャルCEOと言われるランディ・コミサー氏は「ビジネスは自己表現だ」と語っている。一時期メディアについて論じる人たちの間で「メディアはメッセージだ」という言葉が盛んに議論されたことがあったが、それをもじって言えば「ビジネスはメッセージだ」というわけだ。もちろんそれは宣伝という意味ではなく、ビジネスとは本来企業の性格、哲学そして志の実現だと言う意味である。その意味では石榑康利氏の「Kagome」も極めてメッセージ性の高い企業といえる。  「弊社では『ブランド価値経営』ということを言うんです。それは『自然を、おいしく、楽しく、Kagome』という私どものコーポレート・メッセージをお客様にお約束すること、そしてお客様から頂いた信頼にお応えしてお客様との絆を深めてゆくなかで企業として成長してゆくという意味です」と石榑氏は語る。つまり、ブランド価値とはブランドに込められたメッセージが企業の側の責任感と消費者の信頼に裏づけされて価値に高められているということだ。言い換えればブランドそのものが価値を実現しているということになる。  これは極めて重要かつ本質的なことだ。特にカゴメのように人の口に入るものを扱うビジネスにとって。「Kagomeのロゴとともに商品についているLive Trueというのは, True to Natureつまり自然に忠実に真摯に、そしてお客様に対して忠実に真摯にという意味です。」少々失礼な申しようかもしれないが、実はそれは当たり前のことであったはずだ。しかし、残念なことにその「当たり前」のことが食費業界でもしばしば蔑ろにされ、消費者の信頼が裏切られるといった事件をしばしば聞く。「当たり前のこと」を堅持してゆくのが難しいい時代なのだろう。それだけにKagomeのブランド価値経営という方針は貴重であるし、またそれが実はビジネスの上でも正解だったということをKagomeの躍進が証明している。  Kagomeの真摯な姿勢からいえば、アメリカ進出は必然的な流れだったと言えるだろう。「当然のことながら、弊社は原料にこだわりをもっています。ここカリフォルニアのセントラルバレーは世界でも屈指のトマトの大産地です。実はトマトは紫外線に弱いんです。ところがご承知のようにカリフォルニアは大変紫外線が強い。そこでトマトは紫外線に耐えるためにリコピンという成分の作るんです。これがトマトの赤い色の元であると同時に、抗酸化作用を持っているのです。ですからトマトは赤い色が濃ければ濃いほどいい。だからカリフォルニアのトマトは品質が非常に高い。よい原料にダイレクトにすぐアクセスできればそれだけ原料のよさを生かした商品作りができるというわけです。」

野菜の色には理由がある

 Kagomeのアメリカ進出は1989年。最近になってアメリカの一般消費者もMade in USAのKagomeブランドの野菜ジュースなどを目にするようになってきたが、実はそれ以前からKagomeブランドは知る人ぞ知るトップブランドだった。アメリカでの主力商品は業務用のトマトソース。その高い品質が早くから認められ、業界で数々の賞を受賞し、順調に業績をのばし、生産工場も24時間体制、365日ほぼ休みなしで増産を続け年間300万ケースを出荷している。「ラインを拡張して日曜日は休めるようになりました」と石榑氏は言う。アメリカに住むかなり多くの人がそれとは知らずにKagomeの製品を口にしているはずである。しかも、「アメリカのレストラン業界もそろそろ飽和状態、頭打ちで海外に展開してゆく動きが顕著になっています。それにともなって弊社の商品もアジア諸国などに広く浸透しつつあります。レストランチェーンの日本進出と一緒に弊社の商品が本国に『輸出』されるという不思議な現象までおこっています。」  「ただ。業務用ですと一般消費者には知られることはありませんので、野菜飲料でアメリカの地にブランドのプレゼンスを確立してゆくことが次の課題ですね」と石榑氏は今後の課題を指摘するが、そのための戦略についてどのように考えているのだろうか。「かのKIKKOMANさんですら30年かけて道を切り拓いてこられたのですから、一朝一夕で何とかなるとは考えていません。米国市場で成功している先達に学びながら地道にやってゆきます。弊社の商品は原料と品質にこだわっていますからどうしてもある程度の価格になってしまします。まず弊社の商品の価値を正確に伝えてアメリカの消費者の皆さんにも理解してもらうのが先決だと思っています。実はそれは弊社がそもそも日本でも通ってきた道です。社員達が自ら「商品価値の伝道師」となり、あらゆる場所で消費者に啓蒙プログラムを展開して現在のブランド価値を築いたのです。」  もちろん日本でKagomeのトマトジュース、野菜ジュースを知らない人はいないだろう。日本はトマトジュース、野菜ジュース大国で消費量はアメリカの3倍に上るという。逆に言えばアメリカはこれからどんどん開拓してゆける魅力的な市場ということになる。特に最近のアメリカの人たちは健康志向が強くなった。「ですから、商品の価値を理解してもらえればマーケットを拡大できると思います。例えば色。先ほどリコピンのお話をしましたが、弊社では『野菜の色には理由(わけ)がある』をキャッチフレーズにしています。そうした基本的なことから理解してもらおうと思います。今は一般のスーパーでも自然食のコーナーが充実してきています。まずはそうしたところを拠点に徐々に浸透してゆきたいですね。それから学校。今アメリカでは学校からジャンクフードを追放しようという動きが広まっています。その中で子どもたちに自然に忠実な食品のよさを理解してもらいたいと思いますね。」  確かに子どもたちが口にするものを見て暗澹たる気持ちになっている親御さんは多いだろう。今でこそ日本でも「食育」ということが言われ、政府をあげて取り組んでいるが、Kagomeはその点でも進んでいた。すでに30年も前から食と健康をテーマにしたぬいぐるみ劇「カゴメ劇場」を全国で開催、また「食の冒険グランプリ」と称して子ども料理コンテストを10年前から開いている。さらにトマトの苗を全国の小学校に提供するなどの活動も行なっている。アメリカでもスーパーと組んで社員が講師となって料理教室を開きはじめているという。

Live True, Love True

 Kagome USAのトップとしてアメリカにおけるKagomeブランドの確立に向けて全社を率いる石榑氏はKagomeにおける自らの役割に大きく3つの柱を考えている。「まず、中長期的な観点に立つこと。第二に、社員のみんなが働きやすい職場環境を整えること。そして本社に対するアカウンタビリティをしっかり果たすことです。」海外子会社のトップとしていろいろとご苦労も多いかと思いきや、「楽しいことが多い」と語る。「アメリカはいろんな人たちがいますからね。『ほー、そういう考え方をするのか、そんな見方をするのか』と感動もするし、学ぶことも多いですね。もちろん、だからコミュニケーションに苦労はしますが。弊社のオペレーションはアメリカ人です。日本人同士なら『言わなくても分るでしょ』というところがありますが、当然それは通じない。『どうしてそうすべきなのか』というところを徹底的に説明する必要があります。ただ、納得してもらえれば非常によくやってくれますよ。」
 石榑氏のお話を伺っていて印象的なのは語り口が明快なこと、そして自社や自社製品について語るときに楽しそうに愛情深く語るということだ。これは先のランディ・コミサー氏の言葉を再び引けば氏においてビジネスが自己表現になっているということ、石榑氏がご自身の人生を賭けるに足るお仕事をされているということの証だ。そしてKagomeの製品にお世話になる側にとっても重要なことだ。なぜなら、作り手が愛情とプライドを持っていない商品を消費者は信頼できないからだ。

 石榑氏の座右の銘は「Live True, Love True」どという。氏は茶道を能くする。また、古美術に明るく、自ら各地の窯元を訪ね歩くほどだという。茶器、茶道具の類を吟味する目、「一期一会」を旨とし一切の虚飾を排したところに成り立つ無形の芸術である茶道に親しんでいることが氏のビジネスに繋がっていると言っては穿ちすぎるであろうか。自然に忠実に真摯にというKagomeのポリシーと茶道とを重ね合わせると、スイカに砂糖をかけて出された千利休がそそくさと席を立ち「もてなしの心を理解していない」と怒ったというよく知られたエピソードが思い出されるのである。


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